年収だけで住宅ローンの借入額を決めるとハマリます
ネット上などでよく見るのが、下の「年収別、住宅ローンの目安一覧」のような表です。
年収別で「住宅ローンを借りる額はこれぐらいに抑えましょう。」というものですね。
住宅ローンの条件は以下の通りです。
- 金利(元利均等):1%
- 返済期間:35年
- ボーナス返済なし
税込年収 | 借入額(目安) |
300万円 | 2210万円 |
400万円 | 2950万円 |
500万円 | 3690万円 |
600万円 | 4420万円 |
700万円 | 5150万円 |
800万円 | 5900万円 |
900万円 | 6640万円 |
1000万円 | 7380万円 |
「年収のうち25%の返済を目安にしたらこれだけ借りられます。」というわけです。
でも・・
これをそのまま信じて借りてしまうと、落とし穴にはまる危険があります。
この表はネット上でもすごく多く出てきます。
誤解を与えかねない表がよく使われる理由を考えてみると、一つは「多くの人が理解しやすい。」ということがあると思います。
みんな「ここまでなら借りても大丈夫だよ」というパッと見て分かりやすい、安心できる基準を求めています。
そこへ、分かりやすい基準を示すと「こういう分かりやすい基準を待っていました。」とみなさんの同意や理解を得られやすいでしょう。
同意を得られやすいので、説明する側は「年収別、住宅ローンの目安一覧」のような分かりやすい基準を使いたくなってしまうのかもしれません。
現実には、住宅ローンを借りても大丈夫な額は単純に年収だけで線引きできるものではありません。
これをそのまま信じて住宅ローンを借りている人がどれだけいるのかを考えるのはとても恐ろしいことです。
なぜこれを信じてはいけないのか実際のシュミレーションで検証していきます。
年収600万円で住宅ローンを組んだ場合の家計シュミレーション
以下のようなご家族の設定で検証します。
世帯主35歳:年収600万(定年まで年1%づつ上昇)、退職金は60歳で1,000万円
配偶者35歳:専業主婦
子供2人、5歳と3歳(2人とも大学まで進学)
貯金:1,000万円
生活費:月25万円
住宅ローン:4,420万円(住宅ローンの額は上の表の「年収600万円」の目安とされる金額そのままです。)
頭金:350万円
このようなご家族が、大丈夫だと信じた4,420万円の住宅ローンを組んで生活をしていくと将来どうなるか、シュミレーションしてみました。
上は35歳~100歳までの貯蓄の残高を表した図です。
49歳ぐらいまで何とか200万円ぐらいの貯蓄を保てていますが、子供が大学へ行き始めると教育費が大きくなり、ついに貯蓄が底をついてしまいます。
50歳でやってくる1番目のマイナスの山は最大600万円近いですので、これでも大きなマイナスですが、老後にやってくる2番目のマイナスの山は額が大きすぎるので、節約だけではとても解決できません。
老後に足りない金額は2,000万円を超えます。
よく言われる話ですが、まさに「老後破綻」です。
今回のシュミレーションの設定は
・世帯主の給料が年1%順調に上がったとして
・貯蓄が1,000万円あったとして
・退職金が1,000万円のまとまった額もらえて
というように特別に厳しい条件でシュミレーションしたわけでもありません。
どちらかというと、余裕のある家計に見えるのではないでしょうか。
それでも、配偶者が専業主婦であることや、子供が大学まで進学することを考えたら、4,420万円の住宅ローンはとてもおすすめできない結果となってしまいました。
生活費は25万円でシュミレーションしてますが、実際にはこれより少ない生活費の方もいれば、もっと多い方もいると思います。
総務省の調査などでは「2人以上の家計の生活費は31万円」などのデータもありますし、日頃、相談を受けているご家族の生活費もこれぐらいが平均値だと感じますので、25万円はそれほど多すぎる金額でもありません。
当然ですが生活費の額が違えば違った結果になります。
住宅ローンの金利が変われば違った結果になります。
子供が大学まで行くか、行かないかでも違った結果になります。
他にも条件は非常に多くありますので、1つ変わっただけでも違った結果になります。
今回は限られた条件でシュミレーションしていますので、年収600万円の人がすべてこういった結果になるわけではありません。
まとめ
今回のシミレーションの結果から一番知っていただきたいことは、
年収だけで「住宅ローンを借りても大丈夫な額」は分からない。
ということです。
「年収のうち25%の返済に抑える」という目安は、すでに幻想なのかもしれません。
実際に多くの相談者の方のシュミレーションをしていると分かることですが、もはや目安ともいえないケースのほうが多いです。
年収600万円の人がすべて、4,420万円借りて良いはずはありません。
現実問題として、あなたの場合はどうなのかを個別にシュミレーションして考える必要があるのです。
投稿者プロフィール

- 住宅不動産コンサルタント/1級ファイナンシャルプランニング技能士/宅地建物取引士
-
株式会社ライフオブライフ代表。
住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴19年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う
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