在宅勤務で家を買うなら何を優先すべき?リモートワーク時代の住宅購入チェックリスト

在宅勤務で家を買うなら何を優先すべき?リモートワーク時代の住宅購入チェックリスト

リモートワークが変えた「住む場所」の新常識

「毎朝満員電車に揺られ、会社の近くに住むのが当たり前」——そんな時代は、もう昔の話になりつつあります。コロナ禍をきっかけに広まった在宅勤務(リモートワーク)は、2026年の今も多くの職場で定着しています。週に何日か自宅で働く「ハイブリッド勤務」を採用している会社も珍しくなくなりました。

この変化は、住宅購入を考える人にとって「どこに家を買うか」という選択肢を劇的に広げました。でもその一方で、「自由度が増えたぶん、何を基準に選べばいいの?」と迷ってしまう人も増えています。今回はそんな「リモートワーク時代の家選び」について、一緒に考えてみましょう。

「駅から徒歩◯分」より「部屋数」が大事になった

かつての住宅選びの定番といえば、「駅からの距離」と「通勤時間」でした。少しでも会社に近い場所、電車に乗る時間が短い場所——それが「良い立地」とされてきたのです。

ところがリモートワークが当たり前になると、評価軸がガラリと変わってきました。

まず注目されるようになったのが「部屋数」と「専用の仕事スペース」です。リビングの一角でパソコンを広げて仕事をすると、家族の生活音が気になったり、オンライン会議の背景に洗濯物が映り込んだり……。「仕事部屋があるかどうか」が、住み心地を大きく左右するようになりました。都心の小さな1LDKより、郊外の広い3LDKのほうが「快適に働ける」という逆転現象も起きています。

また、インターネット回線の品質も見逃せないポイントです。光回線が使えるか、マンションなら共用の回線速度が遅くないかを確認することが、今や住宅選びの必須チェック項目になっています。

郊外・地方への移住ブームの「その後」

コロナ禍の頃、「会社に行かなくていいなら、自然豊かな場所に住みたい」という声が一気に高まり、都市部から郊外・地方への移住ブームが起きました。神奈川・埼玉・千葉のベッドタウン(都市のそばにある住宅地のこと)だけでなく、軽井沢・那須・淡路島といったリゾート地でさえ、住宅需要が急増したほどです。

では、あれから数年経った今はどうなっているのでしょうか。

実際のところ、「移住したけれど、やっぱり都心に戻った」という「都市回帰」の動きも見られます。週に2〜3日は出社が必要になり、片道2時間の通勤がつらくなったというケースや、子どもの進学・習い事の選択肢の少なさを感じて戻ってきたというケースが多いようです。

一方で、移住して大満足という人たちも大勢います。その違いはどこにあるのでしょう? カギは「出社頻度」と「家族全員の生活スタイル」のバランスです。週1回以下の出社で済む仕事なら、多少遠くても問題になりにくい。でも週3日の出社が必要なら、1〜1.5時間圏内に収めないと、体力的・時間的なコストが大きくなりすぎます。

「資産価値」という視点で見ると……

住宅はただ「住む場所」であると同時に、多くの人にとって人生最大の買い物=資産でもあります。将来売ったり貸したりすることを考えると、「資産価値が落ちにくい場所かどうか」はとても大切です。

リモートワーク普及後の不動産市場を見ると、いくつかの傾向が出てきています。

まず、「駅近物件の強さ」は依然として続いています。「リモートワークが普及したなら、駅から遠くてもいいのでは?」と思いがちですが、不動産の世界では「駅から徒歩10分以内」の物件は値崩れしにくいというのが現実です。なぜなら、住む人の事情は変わっても、駅近物件への需要は変わらないから。出社する人もいれば、将来また通勤が増える可能性もある。駅近は「つぶしが利く」物件なのです。

一方で、リモートワークの普及で注目度が上がったエリアもあります。都心から電車で30〜50分ほどの「準都市圏」と呼ばれる地域です。ある程度の広さと自然、そして万が一の出社にも対応できる交通の便——この「いいとこ取り」ができる立地は、今後も底堅い人気が続くと見られています。

逆に注意が必要なのは、ブームに乗って一時的に値上がりしたものの、インフラ(道路・交通・病院など生活の基盤となる設備)が弱い山間部・離島・過疎地域。こうした場所では、少子高齢化による人口減少の影響を受けやすく、長期的な資産価値の維持が難しいケースもあります。

家を買う前に、自分に問いかけてみてほしいこと

では、実際に住宅購入を検討している方に向けて、判断のヒントをまとめます。

① 自分の「リモート率」は安定しているか? 会社の方針は変わることがあります。「ずっとフルリモートのはず」と思っていても、数年後に出社が増える可能性はゼロではありません。最悪のケース(週5出社)でも許容できる通勤時間かどうか、確認しておきましょう。

② 家族全員が「その場所での生活」をイメージできるか? 自分は在宅でも、パートナーが通勤族だったり、子どもの学校が遠くなったりすることも。家族全員の生活動線(日々の移動ルートのこと)を一緒に考えることが大切です。

③ 10年後・20年後の地域を想像できるか? 人口が増えているエリアなのか、減っているエリアなのか。近くにスーパー・病院・学校はあるか。今は便利でも、将来お店が閉まってしまうかもしれないエリアには注意が必要です。

「どこにでも住める自由」は、素晴らしい可能性であると同時に、「自分で選ばなければならない責任」でもあります。流行りのエリアに引っ張られるのではなく、自分たちの暮らし方をしっかりイメージした上で、後悔のない家選びをしてください。焦らず、じっくり考えることが、きっと一番の近道です。

鬼頭 良行のプロフィール写真

株式会社ライフオブライフ代表 住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う人、売る人の立場に立った「住宅不動産コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う