財産が自宅だけの場合の相続対策

家族のイメージ

「うちは財産といっても自宅だけだから相続争いなんて関係ないよ」といわれる方はよくみえます。

実は「財産が自宅のみ」だからこそちょっとしたことで相続争いになる火種が潜んでいます。

相続が発生する前に行える対策もありますので、早くに問題に気づくことが重要です。

問題に気づかないまま、相続をむかえてしまうと行える対策は限られてきます。

以下が財産が自宅のみの場合、問題となってくる代表的なケースを今回は取り上げます。

  • 兄弟、姉妹のいずれかが、親名義の自宅に同居している間に、親が亡くなり相続が起こった場合

1つの家を物理的に分けることは当然できません。

そうなると登記の持ち分で分けようかという話になる場合もありますが、それはそれで後々問題が出てきます。(後でくわしく書きます。)

それでは遺産分割の方法と事前の対応策をご紹介していきます。

兄弟、姉妹のいずれかが親名義の自宅に同居している間に、親が亡くなり相続が起こった場合

このような家族のイメージです。

親:父親は10年前に亡くなり、母親が最近亡くなった。

子供:姉60才(母親、夫、子供と同居していた)、弟58才

相続財産:自宅のみ(評価価値、4千万円)

同居の母親が亡くなり、自宅が相続財産となった場合、同居していた姉はどうすれば良いのでしょうか。

相続人は姉と弟だけです。

  • 「当然、自分にも相続の権利があるよね。自宅の価値は4,000万ぐらいと聞いたから、2,000万円分は相続する権利があるでしょ。実家を売って、お金で分けようよ。」

  • 「そういわれても家族で住んでいる住み慣れた自宅だし、すぐには引っ越しできないわ・・」

このような事態になるかもしれません。

これからどのような対応をしたら良いのか見ていきます。

親が亡くなってから不動産を遺産分割する方法

換価分割

弟が提案しているのはこの方法ですね。

分かりやすく言うと、実家を売ってお金に代えて2人で分けましょう。ということです。

この方法だと姉が不安を感じているように、同居していた実家を出ていかなくてはいけません。

現物分割

じゃあ、広い土地なら2つに分割して分ければいいじゃないか。と思う方もいるでしょう。

これが「現物分割」ですね。

ただ、あまり広くない土地で建物が立っている場合は、土地は2つに分筆できても建物は分割できませんし、2つの土地を分割後、有効活用しやすいようにきれな形に分筆できないと土地の価値が下がってしまうかもしれません。

分割後に土地を売ったり、有効活用するのに支障が出ないような分割が可能なのか検討が必要です。

代償分割

姉が実家を相続する代わりに、弟に2,000万円の金銭を渡して分割する方法です。

この方法を使うためには、姉に2,000万円の余裕資金が必要です。

親から現金も相続できているなら良いですが、今回は実家だけです。

なかなかこれだけの資金を準備するのも簡単ではないでしょう。

共有

姉と弟2人の名義で不動産の登記をする方法、文字通り共有という方法もありますが、後々問題が出てくる可能性もあります。

本人達が亡くなって新たな相続が発生すると、子供やその孫と相続人がどんどん増えていきます。

共有の不動産は共有者全員の意見がまとまらないと売ったり、貸したりできませんから、子供同士で意見の違いがあると活用ができなくなります。

このように後々の家族にもめごとの種を残すことにもつながりますので、できれば避けたい方法です。

親の生前に行える対策

今回のケースで実家に住み続けながら、相続を解決するためには代償分割を選択したい所ですが、前述のように姉に余裕資金がないといけません。

その資金を用意するために親が生前に生命保険に入り、その保険金を代償金として利用するという方法もあります。

この時に注意しないといけないのは保険の受取人を姉にするということです。

生命保険金は遺産ではなく受取人固有の財産となるため、今回のケースでは姉を受取人とします。

姉は弟に保険金から代償金を支払うことができます。

もし、弟を受取人にしてしまうと保険金は弟の固有財産となり、これとは別に自分の相続分を要求できることになります。

弟から「もらった保険金は私の財産で、相続分は相続分だからきっちり分けよう。」といわれてしまうかもしれません。

弟が聞き分けの良い人で、「保険金をもらったから、実家は姉さんが継いでよ」と言ってくれれば良いのですが・・

まとめ

相続財産が自宅のみの場合は、生前の対策や話し合いが必要なことがお分かりいただけたと思います。

また、不動産は現金や株式と違って同じ物が2つとないので、その価格の算定が難しい財産と言えます。

今回のケースで、代償分割をするのであれば、姉にとっては自宅の価値が低く見積もられたほうが弟に渡す代償金が少なくすみます。

弟からすれば自宅の価値が高く見積もられたほうが、代償金をより多くもらえます。

ちょっとした意見の食い違いで相続が争族に・・ということは避けたいですよね。

不動産の価格を算定するときにはお互いに納得できる価格を、専門家の意見も交えて決める必要があります。

投稿者プロフィール

鬼頭 良行
鬼頭 良行住宅不動産コンサルタント/1級ファイナンシャルプランニング技能士/宅地建物取引士
株式会社ライフオブライフ代表。
住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴19年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う

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