住宅ローンの繰り上げ返済と資産運用、どちらがお得?

住宅ローンの繰り上げ返済と資産運用、どちらがお得?

住宅ローンを利用する方にとって「余剰資金を繰り上げ返済に回すべきか、それとも資産運用に回すべきか」というテーマは関心が高いようでお客様からもよく相談を受けます。

今回は「4,000万円・変動金利1.0%・35年返済」のローンを前提に、10年後に700万円を繰り上げ返済した場合と、同じ700万円を繰り上げ返済せずに利回り3%で10年間運用した場合を比較し、どちらが得なのかを考えてみます。

4,000万円の住宅ローンを例にシミュレーション

1. 住宅ローンの基本条件

  • 借入金額:4,000万円
  • 金利:変動金利1.0%
  • 返済期間:35年(420回払い)

この条件で試算すると、毎月の返済額は約11.3万円、総返済額は約4,750万円程度となります。

利息総額はおよそ742万円です。

2. 10年後に700万円を繰り上げ返済した場合

繰り上げ返済は「返済期間短縮型」を想定します。

  • 10年後に700万円を繰り上げ返済すると、残高は約2,278万円に減少します。
  • その後の返済期間は35年から28年に短縮され、最終的な支払利息はおよそ約570万円程度まで圧縮可能です。

つまり、繰り上げ返済によって得られるメリットは「利息軽減:約172万円」と「返済期間の短縮」という2点になります。

返済リスクを減らせる心理的安心感も大きいでしょう。

3. 繰り上げ返済をせずに700万円を運用した場合

繰り上げ返済を行わず、手元資金を資産運用に回した場合を考えます。

  • 投資額:700万円
  • 想定利回り:年3%(複利)
  • 投資期間:10年

この場合、700万円は10年後に約940万円に成長します(+240万円)。

一方、住宅ローンは繰り上げ返済をしないため、総利息は先ほどの約742万円のままです。つまり、ローン返済にかかる利息を減らす効果はありませんが、資産の増加というリターンを得ることができます。

4. 繰り上げ返済と資産運用を比較すると

  • 繰り上げ返済の効果:利息軽減 約172万円 + 期間短縮
  • 資産運用の効果:運用益 約240万円 + 資産形成

単純な金額比較では、今回のシナリオでは「資産運用の方が68万円ほど有利」という結果になりました。

運用利回りが上昇すれば、資産運用のメリットはさらに大きくなります。

また、資産運用を選んだ場合は「手元資金を残して、将来のライフイベントや万一のリスクに備える」という柔軟性を持てます。

例えば教育資金や老後資金に充てることも可能で、必ずしも住宅ローンに資金を縛らなくても良いという自由度が魅力です。

5. 金利上昇リスクと運用リスク

今回の試算は「金利1.0%が続く」と仮定していますが、変動金利型は将来の金利上昇リスクを抱えています。

仮に金利が2%に上がれば、総利息はおよそ1,500万円に膨らむ可能性もあり、その場合は繰り上げ返済の効果が圧倒的に大きくなります。

資産運用にもリスクがあります。

想定利回り3%はあくまで想定であり、相場環境によっては元本割れの可能性もゼロではありません。

したがって、「確実に返済リスクを減らすか」「将来の資産形成を狙うか」という価値観の違いが判断を分けるポイントになります。

6. まとめ

  • 繰り上げ返済のメリット:利息軽減・返済期間短縮・心理的安心感
  • 資産運用のメリット:資産拡大・資金の流動性・将来の自由度

今回の試算では資産運用の方がやや有利という結果になりました。

しかし、家計のキャッシュフロー(収支)やライフプランによって最適解は異なります。

教育資金や老後資金を優先する家庭なら運用重視、金利上昇リスクを強く意識する家庭なら繰り上げ返済重視といったように、バランスを取りながら判断することが重要です。

また、資産運用の期間をどのくらいとれるのか、いつ資金が必要になるのか、によっても一番良い選択は変わってきます。

最終的には「数字上の損得」だけでなく、「安心感」「資金の柔軟性」といった心理的な側面も含めて、自分や家族に合った選択をしていくことが求められます

鬼頭 良行のプロフィール写真

株式会社ライフオブライフ代表。 住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う