「政策金利1.0%」って何が変わる? ― 31年ぶりの水準で、住宅ローンは変動と固定どっちがいい?

「政策金利1.0%」って何が変わる? ― 31年ぶりの水準で、住宅ローンは変動と固定どっちがいい?

「日銀が利上げ」というニュース、最近よく耳にしませんか?2026年6月、日本銀行は政策金利を0.75%から1.0%に引き上げました。1.0%という水準になるのは、なんと1995年9月以来、約31年ぶりのことです。「バブル崩壊後、ずっと低金利が続いていた」という感覚をお持ちの方も多いと思いますが、その時代が静かに終わりつつあります。今回は、この利上げが住宅ローン選びにどう関わってくるのか解説します。

そもそも「政策金利」ってなに?

「政策金利」とは、日本銀行が銀行同士でお金を貸し借りするときの基準となる金利のこと。いわば「金利の元締め」のような存在で、この数字が上がったり下がったりすると、私たちが銀行から住宅ローンを借りるときの金利にも波及していきます。

日銀は2024年3月に「マイナス金利政策」(金利をマイナスにしてまでお金を借りやすくする、異例の政策)を解除して以来、少しずつ金利を「正常な水準」に戻す動きを続けてきました。そして2026年6月、ついに1.0%まで引き上げたのです。7月末の会合では据え置きが決まりましたが、市場では「次は2026年12月にもう一段の利上げがあるのでは」との見方も出ており、このまま上昇傾向が続く可能性は十分にあります。

住宅ローンの「変動金利」と「固定金利」、それぞれ何が起きている?

住宅ローンには、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。

  • 変動金利:借りている間、市場の動きに合わせて金利が定期的に見直されるタイプ。日銀の政策金利と連動しやすいのが特徴です。今は大手銀行の平均でおよそ1.0〜1.1%程度まで上がってきています。
  • 固定金利(代表例:フラット35):借りたときの金利が完済まで変わらないタイプ。「フラット35」は住宅金融支援機構と民間銀行が提携して提供している、代表的な全期間固定金利の住宅ローンです。こちらは長期金利という、変動金利とは別の指標に連動していて、2026年8月時点でおよそ3.2〜3.3%まで上昇しています。

つまり今は、変動金利と固定金利の両方が上がっている、しかも固定金利のほうがより大きく上がっている、という状況です。この2つの金利差(専門的には「スプレッド」と呼ばれます)は2.1〜2.6ポイントほどまで開いていて、データを取り始めた2018年以降で最大の水準になっています。

「変動が有利」な状況は、いつまで続く?

「金利差がこんなに大きいなら、変動金利のほうがお得なのでは?」と思いますよね。実際、今の毎月の返済額だけを比べると、変動金利のほうがかなり軽くなります。たとえば3,500万円を35年で借りた場合、変動金利1.08%なら月々約10万円ですが、固定金利3.21%だと月々約13.9万円。差額は月4万円近くにもなります。

ただし、変動金利には「今後、政策金利がさらに上がれば、返済額も上がっていく」というリスクがつきものです。日銀の植田総裁は、これ以上金利を上げても景気を冷やしすぎない「ちょうどいい金利水準」(専門用語で「中立金利」と呼ばれます)について、1〜2.5%程度という認識を示しています。つまり、政策金利が1.0%の今は、まだ引き上げの余地が残っている可能性がある、ということです。

変動金利の「基準金利」も覚えておきたい

もう一つ知っておくと安心なのが「基準金利」という言葉です。実は多くの銀行では、変動金利は「基準金利」から一定の割引幅を引いた金利として提示されています。基準金利自体は各銀行が短期の市場金利をもとに決めていて、日銀の政策金利が上がると、この基準金利も見直されやすくなります。「変動金利が上がった」というニュースの裏側では、たいていこの基準金利の引き上げが起きている、とイメージしておくとわかりやすいと思います。

なお、変動金利には「5年ルール」「125%ルール」と呼ばれる、返済額が急に跳ね上がらないようにする仕組みを設けている銀行が多くあります(5年間は返済額を見直さない、見直し後も直前の1.25倍までしか増えない、といった内容です)。ただし、これはあくまで毎月の返済額の急上昇を抑える仕組みであって、金利が上がった分の利息そのものがなくなるわけではありません。抑えられた分は元金の返済に回らず、後ろの期間に繰り越されることもあるため、「ルールがあるから安心」と考えすぎず、あくまで急激な負担増を和らげる緩衝材として理解しておくのがよいでしょう。

金利だけで選ばず、「上がっても大丈夫か」で選ぶ

こういう局面で大切なのは、「今、金利が低いほうを選ぶ」ではなく、「将来、金利が上がっても家計が耐えられるか」という視点です。変動金利を選ぶなら、金利が上がったときに返済額がどれくらい増えるかをあらかじめシミュレーションしておくこと。そして、固定金利との差額分を貯蓄や積立投資(たとえば2024年から拡充された新NISAなど)に回しておき、将来の金利上昇や繰り上げ返済の備えにしておくのも一つの方法です。

逆に、「将来の返済額が変わるとハラハラしてしまう」「家計にあまり余裕がない」という方であれば、多少金利が高くても返済額がずっと変わらない固定金利のほうが、安心して暮らせるかもしれません。

政策金利1.0%という数字だけを見ると難しそうに感じますが、要は「これまでの超低金利の時代が終わりつつある」というサインです。変動か固定かの正解は人によって違います。目先の返済額の軽さだけでなく、ご自身の収入の安定度や貯蓄の余力、性格的に金利の変動にどれくらい耐えられそうかも含めて、じっくり比べてみることをおすすめします。

鬼頭 良行のプロフィール写真

株式会社ライフオブライフ代表 住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う人、売る人の立場に立った「住宅不動産コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う