「年収の壁」が変わると、住宅ローンの借りられる額も変わるって本当?

「年収の壁」が変わると、住宅ローンの借りられる額も変わるって本当?

「年収の壁」という言葉、ニュースでよく見かけるようになりましたよね。2025年から2026年にかけて、この「壁」の位置が立て続けに見直されています。実はこの制度改正、パートで働く方の家計だけでなく、共働き世帯の住宅ローンの組み方にも意外と関わってくる話なんです。今回は「年収の壁」の変更点と、それが住宅購入計画にどうつながるのかを、かみくだいて解説します。

そもそも「年収の壁」ってなに?

「年収の壁」とは、年収がある一定のラインを超えると、税金や社会保険料の負担が新たに発生し、かえって手取りが減ってしまう「境目」のことです。よく「壁を超えると損」と言われるのはこのためで、扶養に入っているパート・アルバイトの方が「壁を超えないように」と労働時間を調整する、という話につながっています。この壁には、大きく分けて「税金の壁」と「社会保険の壁」の2種類があります。

2026年、壁の位置はこう変わった

まず「税金の壁」です。これまで「103万円の壁」と呼ばれてきた、本人に所得税がかからない年収のラインは、2025年の税制改正でいったん123万円に引き上げられ、2026年分ではさらに引き上げが行われています。ざっくり言うと、「103万円までしか働けない」と思っていたラインが、今はかなり広がっている、というイメージです。

一方、「社会保険の壁」は税金とは別のルールで動いています。代表的なのが「106万円の壁」と「130万円の壁」です。

  • 106万円の壁:週20時間以上働く・月収8.8万円以上といった条件を満たすと、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に自分で加入する義務が生じるライン。このうち「月収8.8万円以上」という条件(賃金要件)は、2026年10月に撤廃される予定で、撤廃後は「週20時間以上働いているか」が主な基準になります。
  • 130万円の壁:配偶者や親の扶養から外れて、自分で社会保険料を負担することになるライン。2026年4月からは、実際の年収の実績ではなく「労働契約書に書かれている予定の収入」で判定する方式に変わりました。単発の残業などで一時的に収入が増えても、それだけでは扶養から外れにくくなった、というのがポイントです。

つまり「税金の壁」は上に大きく引き上げられ、「社会保険の壁」は仕組みそのものが見直されている、という状況です。

この変化が、住宅ローンの「借りられる額」に関わってくる理由

ここからが本題です。共働きで住宅ローンを組む場合、多くの方が「ペアローン」(夫婦それぞれが個別に住宅ローンを契約し、それぞれが債務者になる方法)や「収入合算」(どちらか一方が主債務者になり、もう一方の収入も合わせて借入額を計算する方法)という仕組みを使います。どちらも、配偶者の年収が高いほど、世帯として借りられる金額は大きくなります。

これまで「扶養の範囲で働きたいから」とパート収入を103万円や130万円あたりに抑えていた方が、壁の引き上げをきっかけに「もう少し働いても大丈夫かも」と労働時間を増やせば、その分だけ配偶者の年収が増え、住宅ローンの借入可能額が伸びる可能性があります。逆に言うと、これまでの資金計画は「配偶者の年収は壁の内側に抑えたまま」という前提で組まれていたケースも多く、壁が変わったことで「本当はもう少し借りられる(あるいは、無理して借りなくても済む)」という見直しの余地が出てきているとも言えます。

具体的にイメージしてみると

たとえば、これまで「130万円の壁」を意識してパート年収を年130万円未満に抑えていた方が、社会保険の仕組みが変わったことをきっかけに、年収200万円程度までしっかり働くようになったとします。この場合、社会保険料の負担は新たに発生しますが、額面の収入自体は大きく増えるため、収入合算やペアローンで見たときの世帯年収も底上げされます。金融機関によって計算方法に差はあるものの、世帯年収が上がれば、単純計算では借入可能額も数百万円単位で変わってくることは珍しくありません。

もちろん、これは「壁が変わったから、みんな働き方を変えるべき」という話ではありません。お子さんの年齢や家庭の事情、キャリアの希望によって、扶養の範囲内で働き続けたいという選択も当然あってよいものです。あくまで「壁の位置が変わったことで、これまで無意識に前提にしていた働き方や借入額が、実は見直せるかもしれない」という気づきのきっかけとして捉えていただくのがよいと思います。

「借りられる額」より「働き方の希望」を軸に考える

ただし、ここで気をつけたいのは、「借入額を増やすために働き方を変える」という発想は本末転倒になりやすい、という点です。金融機関の住宅ローン審査では、年収に対してどのくらいの割合を返済に充てるか(返済比率)に目安の上限があり、配偶者の収入を合算すればするほど、その分「働き続けること」が前提の資金計画になります。産休・育休や働き方の変化があった場合にも無理なく返せるか、という視点は欠かせません。

「年収の壁が変わったから、いくら借りられるようになったか」だけでなく、「これからどんな働き方をしたいか」「その働き方は、この先何年も続けられそうか」をまず整理したうえで、無理のない借入額を組み立てていくことをおすすめします。制度は今後もまだ細部が変わる可能性がありますので、住宅購入のタイミングが近づいてきたら、最新の情報をもとに一度シミュレーションしてみるとよいでしょう。

鬼頭 良行のプロフィール写真

株式会社ライフオブライフ代表 住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う人、売る人の立場に立った「住宅不動産コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う