物価高・金利上昇時代の住宅購入戦略

物価高・金利上昇時代の住宅購入戦略

「今が買い時なのか、それとも待つべきか。」住宅購入を検討されている方から、最近よくこんな質問をいただきます。2025年1月の消費者物価指数は前年比4.0%上昇、日銀は2025年1月に政策金利を0.5%に引き上げと、物価高と金利上昇が同時に進む今、住宅購入のタイミングに悩まれるのは当然です。

今回は、最新の経済指標を踏まえながら、この難しい時期に賢く住宅を購入するための戦略をお伝えします。

2025年の経済状況を正しく理解する

物価上昇は続いている

2025年4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年比3.5%上昇しました。

食料品の値上げを中心に、日々の生活コストは確実に増えています。

名古屋でも、スーパーでの買い物や外食の際に「高くなったな」と実感されている方は多いのではないでしょうか。

この物価上昇の背景には、エネルギー価格の高止まりや円安による輸入コストの増加があります。

残念ながら、この傾向は短期間で収まる見込みは低く、2025年後半も高い水準で推移すると見られています。

住宅ローン金利も上昇基調

2024年3月の日銀によるマイナス金利政策の解除とその後の追加利上げにより、政策金利は0.5%まで上昇しています。

これに伴い、2025年4月の変動金利型住宅ローンの金利は0.15%~0.35%上昇しました。

変動金利は現在0.4%~0.9%程度で推移していますが、今後さらに上がる可能性があります。

固定金利も同様に上昇傾向にあり、フラット35は前年より約0.5%高い水準となっています。

賃金は上がっているが…

明るいニュースもあります。2025年春闘の賃上げ率は5%台を達成し、2年連続の高水準となりました。

多くの企業でベースアップが実施され、給料は確実に上がっています。

しかし問題は、物価上昇のスピードに賃金上昇が追いついていないケースが多いということです。

給料が5%上がっても、物価が3.5%上がれば、実質的な購買力の増加は1.5%程度。家計の実感としては「思ったほど楽にならない」という方が多いのではないでしょうか。

「待てば安くなる」は本当か?

こんな状況だと「もう少し様子を見よう」と考えたくなりますよね。

確かに慎重に判断することは大切ですが、「待てば状況が良くなる」とは限りません。

金利上昇のインパクト

具体例で見てみましょう。4,000万円を35年返済で借りる場合、金利が0.5%から1.0%に上がると、毎月の返済額は約10,000円増え、総返済額では約380万円も増えることになります。

「今は金利が上がったから様子を見よう」と1年待って、その間にさらに0.3%金利が上がってしまったら? それだけで数百万円の差が出てしまう可能性があるのです。

物件価格は下がる?

「金利が上がれば物件価格は下がるのでは?」という質問もよくいただきます。

理論上はそうなのですが、実際には建築資材の高騰や人件費の上昇により、新築物件の価格は下がりにくい状況です。

土地に関しては、需要の低いエリア(言葉を選ばずにいうと不人気エリア)は価格が下がったとしても、需要の高いエリア(人気エリア)の価格は下がりにくいのではないでしょうか。

今だからこそ押さえるべき5つの戦略

1. 無理のない予算設定がこれまで以上に重要

物価高・金利上昇時代だからこそ、「借りられる額」ではなく「返せる額」で予算を考えることがより一層大切になります。

目安として「年収の5~6倍」または「住宅ローンの返済比率は手取り収入の25%以内に抑える」などはネット上でもよく目にする基準ですが・・

多くの相談者の方の実例をみてきた経験では、これらの目安が当てはまらない場合もあるというのが本音です。

年収だけで考える予算の目安で抜け落ちているのは「支出」です。

同じ「年収」だからと言って同じ「支出」というわけはありませんよね。

同じ年収でも支出が多い方は住宅に使える予算が少なくなるので、年収だけで予算を決めるのは落とし穴があるといえます。

そこで、一生の収入と支出をシミュレーションしたライフプランが重要になります。

2. 変動金利と固定金利の見極め

現在の金利水準を考えると、変動金利と固定金利の差は以前ほど大きくありません。

変動金利が向いている人

  • 借入額が年収の4倍以内と少なめ
  • 貯蓄に余裕があり、金利上昇時に繰上返済できる
  • 10~15年程度で完済予定

固定金利が向いている人

  • 借入額が年収の5倍以上
  • 将来の教育費など大きな支出が控えている
  • 返済額を確定させて安心したい

私は相談者の方には金利が上がったら返済はどうなるか」を必ずシミュレーションするようにしています

変動金利で借りる場合、金利上昇に耐えられる予算設定が必要です。

3. 頭金と諸費用の準備

物価高の今だからこそ、できるだけ頭金を用意することが重要です。借入額を減らすことで、将来の金利上昇リスクを軽減できます。

目安としては、物件価格の2割程度の頭金に加え、諸費用として物件価格の1割程度を現金で用意できるのが理想です。ただし、手元資金をすべて使い切ってしまうのは危険です。住宅購入後も、生活費の6ヶ月分程度は残しておきましょう。

4. ランニングコストも含めた資金計画

住宅ローンの返済だけでなく、固定資産税、修繕費、管理費(マンションの場合)などのランニングコストも年々上昇しています。

特に戸建ての場合、将来の修繕費用として毎月2~3万円程度を積み立てておく必要があります。これらの費用が家計を圧迫しないよう、余裕を持った資金計画を立ててください。

5. 補助金・減税制度の活用

物価高・金利上昇時代だからこそ、国の支援制度をフルに活用しましょう。2025年度は、子育て世帯向けの補助金が最大160万円、住宅ローン減税で最大455万円の控除が受けられます。

これらの制度を活用することで、実質的な負担を大きく減らすことができます。ただし、補助金には申請期限や条件がありますので、早めに確認することが大切です。

今買うべきか、待つべきか

結論から言えば、「準備ができている人は、今動くべき」だと私は考えています。

確かに金利は上昇しましたが、歴史的に見ればまだ低い水準です。1990年代は変動金利で8%を超えていた時代もありました。現在の0.5~1.0%程度という金利は、決して高いわけではありません。

また、賃金上昇も続いており、収入が増えている今のうちに住宅ローンを組んでおくことで、将来的には家計に占める住宅費の割合を下げていくことができます。

ただし、これは「無理のない予算で」という前提があってこそです。

独立系FPだからこそできるアドバイス

住宅会社や銀行に相談すると、どうしても「今買いましょう」という方向に話が進みがちです。それはビジネスモデル上、当然のことです。

一方、私たち独立系ファイナンシャルプランナーは、特定の住宅会社や金融機関に属していません。だからこそ、「今は買わないほうがいい」というアドバイスもできますし、物件選びや住宅ローン選びでも完全に中立的な立場でサポートできます。

物価高・金利上昇時代の住宅購入は、従来以上に慎重な判断が求められます。しかし同時に、正しい知識と戦略があれば、この状況下でも賢く住宅を購入することは十分に可能です。

まとめ

物価高・金利上昇時代の住宅購入では、以下のポイントを押さえましょう:

  1. 最新の経済状況を正しく理解する(物価上昇3.5%、金利上昇傾向)
  2. 無理のない予算設定(年収の5倍以内、返済比率25%以内を一律に信じるのではなく、ライフプランで一生のシミュレーションを)
  3. 金利タイプの慎重な選択(自分の状況に合わせて変動か固定か)
  4. 頭金の準備とランニングコスト対策
  5. 補助金・減税制度の最大活用

「今が買い時かどうか」は、お客様一人ひとりの状況によって異なります。年収、支出、貯蓄額、家族構成、将来の教育費、ライフプランなど、様々な要素を総合的に判断する必要があります。

住宅のお金相談室では、最新の経済動向を踏まえながら、お客様の状況に合わせた具体的な資金計画をご提案しています。「この状況で本当に買っても大丈夫か」という不安をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

無理のない住宅予算を一緒に考え、物価高・金利上昇時代でも安心して暮らせる住まいづくりをサポートいたします。

鬼頭 良行のプロフィール写真

株式会社ライフオブライフ代表。 住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う