不動産の相続対策としてのアパート建築は有効?

不動産の相続対策として、よく挙げられる方法が「アパートの建築」です。

アパート建築に適した土地を所有している地主さんの中には、アパート建築業者から「アパートを建てれば相続対策になりますよ」という営業を受けたという方も多いのではないでしょうか。

しっかりとした事前計画を立てたうえで、アパート建築を行えば有効な相続対策になる一方、安易なアパート建築は失敗する可能性も高くなります。

起こりやすい間違いは「とりあえずアパートを建てておけば相続対策になる」という勘違いです。

アパート建築は多くの場合、金融機関から多額の借り入れをして行う場合が多いと思います。

失敗すると相続対策どころかその借り入れの返済もできないという状況もおこりえます。

場合によっては、無理にアパートを建てず何も対策しないほうがまだ良かった・・ということになってしまうかもしれません。

この記事では、なぜアパートを建てると相続対策になると言われるのか?また、その注意点についてご紹介します。

「アパート建築が相続対策になる」といわれる理由

アパートを建てた場合、土地と建物の評価額について減額されます。

評価額というのは税率が掛けられる元の金額です。

単純化すると

評価額 × 税率 = 税額 

ですので、評価額が低くなることで結果として相続税も低くおさえられることになります。

ここは特に分かりにくいところですので、図で説明しますね。

現金1億2千万を使ってアパートを建てたとします。

建物の固定資産税評価額は建築費の50~70%まで下がるので、まず8,000万円まで下がります。

そこからさらに、賃貸用の建物であればさらに評価額が下がります。

8,000万円からさらに30%減額され、結果としておよそ5,600万円まで評価額は下がります。

1億2,000万円の現金だと評価はそのまま1億2,000万円ですが、現金を使ってアパートを建てると評価はおよそ5,600万円まで下がるのです。

さらにアパートを建てた土地も評価が下がります。

1億2千万円で買った土地の相続税評価額はおよそ9,000万円になるとします。(※土地の自用地評価額の計算方法は土地が路線価地域か、倍率地域かによって異なりますので目安です。)

賃貸用の建物を建てた場合はさらに評価額が下がります。

9,000万円からさらに減額され、結果として7,380万円まで評価額は下がります。

アパート建築計画の失敗を避ける方法

ここまでの説明だけだと、「現金のまま相続するより、アパート建てて相続したほうが良いじゃないか」となりそうなのですが、アパート建築には注意点もありますので一つずつ確認します。

借入の返済計画

アパート建築は建てて終わりではなく、その後も長期間にわたって行う投資事業だということです。

融資を受けてアパートを建てる方も多いですが、投資資金がどのくらいの期間で回収できるのか確認することは重要です。

また、事業計画の家賃設定が甘めになっていないかの確認も重要です。

家賃設定を高くすれば一見すると収入が多くなりますので、上手くいく事業計画に見えてしまうこともあります。

ただ、家賃設定があまりに現実とかけ離れて高かったり、空室リスクを甘めに設定している事業計画は注意が必要です。

管理契約の内容

最近のアパート建築会社からの提案は「一括借り上げ」を前提とした内容が多いように思われます。

「管理会社が一括で借り上げてくれるなら家賃がちゃんと支払われて安心」と勘違いしてしまうとトラブルの元です。

一括借り上げ契約では、途中で家賃などの改定を協議することが条件とされていることが多いです。

つまり、最初に決められた家賃がずっと続くわけではなく、下がる可能性もあるということを考慮しておく必要があります

管理会社との家賃改定の協議がまとまらない場合は一括借り上げの契約解除ということもありえますので、オーナー自ら新たな管理会社を探さないといけない場合もあります。

アパート建築のまとめ

アパート建築は相続対策として有効な手段の一つではありますが、すべての人に合った対策ではありません。

場合よっては、他の相続対策のほうが有効な場合もあります。

本当にアパート建築が唯一の手段なのか?他の方法もないか検討する必要はあります。

またアパートを建てるのが初めてで、その事業計画を自ら分析するのは正直とても困難だと思います。

一度建ててしまったら、数十年間にわたり事業経営していく覚悟も必要です。

少しでも、分からないこと、疑問に思うことがあれば第三者の専門家に相談することをおすすめします。

投稿者プロフィール

鬼頭 良行
鬼頭 良行住宅不動産コンサルタント/1級ファイナンシャルプランニング技能士/宅地建物取引士
株式会社ライフオブライフ代表。
住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴19年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う

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