「相続時精算課税制度」という言葉をまったく聞いたことない!という方もいらっしゃるかもしれません。

相続税のことが将来心配だ・・という方には強い味方になってくれるお得な制度ですので、ぜひ知っておいていただければと思います。

2024年に制度が改正されてさらに使いやすい制度となりました。

相続時精算課税制度とは

生前贈与をする時は2500万円まで贈与税がかかりません。でも、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税します」 という制度です。

事例で説明します。

例えば8千万円の財産をもっているAさんがいたとします。

Aさんは生前に、息子Bさんに2,500万円を贈与しました。

Aさん(父)

2,500万円までは贈与税かからないそうだから、お前に贈与するよ。

Bさん(息子)

父さんありがとう!

制度を使えば、2,500万円まで贈与税はかかりませんので、1円も贈与税を支払う必要がありません。

贈与したAさんの手元には5,500万円の財産が残りました。

それから時は流れ・・Aさんは亡くなりました。

Aさんが残した財産は7,500万円です。

Bさん(息子)

父さんが残してくれた7,500万円に相続税がかかるのかな・・

ここで出てくるのが、相続時精算課税制度です。

相続時精算課税制度を使って生前贈与した財産は、2,500万まで贈与税が非課税になりましたよね。

しかし、その贈与したAさんが亡くなってしまった時には、Bさんに残された財産だけではなく、この相続時精算課税制度を使って贈与した財産も含めて相続税を計算しなければいけません。

つまり、Bさんの場合は、残された財産5,500万と、相続時精算課税制度で贈与した財産2,500万を足した、8千万円に対して相続税が課税されることになります。

5,500万+2,500万 8千万円に相続税がかかるんだ!

2,500万まで贈与税がかからない思っていたら、最後には相続税が課税されます。

「贈与のときに税金はとらないけど、相続のときに非課税にした分を精算して課税しますね。」という制度なのです。

つまり、贈与税が非課税になった財産には最終的に相続税が課税されるので、「税金の先送り」ができる制度といえます。

2024年からの変更点

2024年1月1日以降に相続時精算課税を選択した場合、年間110万円までの基礎控除が新たに設けられました。

2024年からの変更点のメリット

1,年間110万円までの贈与は非課税になり、申告も不要となります。

2,年110万円以下の贈与であれば非課税となる「暦年課税制度」では、相続開始前7年以内の贈与は無かったことにされ、相続財産に足し戻されてしまいます。このことを「生前贈与加算」と言います。

一方、相続時精算課税制度では、非課税枠内で贈与した分は相続財産に足し戻さなくてもよいこととされましたので、年間110万円までであれば完全に非課税となります。

新しい相続時精算課税制度の注意点

110万円を超えたら贈与税の申告が必用になる

年110万円の非課税枠を超えたら贈与税申告が必用になります。

さらに、超えた部分に対しては必ず相続財産に加算する必要があります。

暦年課税制度には戻れない

一度、相続時精算課税制度を選択したら暦年課税制度に戻ることはできません。

どちらが自分にとっては有利なのか判断する必要があります。

小規模宅地の特例が使えなくなる場合も

相続時精算課税制度を使って土地などを贈与した場合、その土地は小規模宅地等の特例を使うことができません。

小規模宅地の特例の説明はこちらから

不動産の贈与税を減らすことはできたが、相続税がかえって増えてしまった・・ということにならないように慎重に選択する必要があります。

まとめ

相続時精算課税制度は基本的に、「税金の先送りができる制度」と思っていただいて大丈夫なのですが、人によっては相続時精算課税制度を使うほうが節税になる場合もあります。

具体的には以下のようなケースです。

・110万以下でしか贈与しない

・相続財産が基礎控除の範囲内

・将来値上がりしそうな不動産や株がある

・贈与時に価値が大きく下がっている不動産や株がある

・アパートやマンションなど将来にむけて収益を生む財産がある人

・事業承継がある人で自社株の評価額が目減りしている

ケースバイケースで相続時精算課税制度を使うべきかどうか判断は変わってきますので、ぜひ専門家にご相談ください。

弊社はお金と不動産のプロとして税理士その他士業の方と提携していますので、チームで問題解決にあたらせていただいております。

法改正によって、これまで義務のなかった相続登記が義務化されます。

登記簿の所有者の名義を変更するには、法務局へ登記申請することになります。

この登記申請は一般的には「不動産の名義変更手続き」とよくいわれますので、こちらの言葉のほうが効き馴染みがあるのかもしれません。

正当な理由がなくこの相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性もあります。

もしかしたら自分の家も・・と思った方はどんなケースが当てはまるのか気になるところだと思います。

考えられるケースは

・夫が亡くなった後、夫名義の家に妻だけが住んでいるが、夫から妻への名義変更を行っていない場合。

・両親ともに亡くなった後に、父親名義のままの家に子が住んでいるが、子への名義変更を行っていない場合。

などが考えられると思います。

いつから相続登記が義務化されるのか

相続登記の義務化は令和6年4月1日から施行されます。

これから起こる相続だけではなく、過去の相続にも適用されますので注意です。

具体的には

  1. 施行日(令和6年4月1日)
  2. 自己のために相続開始があったこと知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日

1,2のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

過去に相続があったことを知りながら、相続登記をしていない不動産の相続人は、施行日から3年以内に相続登記をしなければならないことになります。

一方、相続があったことをまだ知らない人は「知ったときから3年以内」が相続登記の期限となります。

施行日時点で相続があったことを知っているか知らないかで相続登記の期限が変わる。というのがポイントです。

なぜ相続登記が義務化されるのか

最近よく耳にするのが所有者不明土地の問題です。

公共事業などで利用するために、土地所有者と買取交渉をしたくても、所有者が誰なのかどこに住んでいるのか分からずに事業がストップしてしまうこともありました。

所有者が分からない空き家が増えるというのは防犯や災害防止の観点からも望ましくありません。

こうした理由から所有者の情報が不明な土地を減らすというのが国の方針です。

相続登記はどうやってやる?

相続登記の流れについて簡単に説明します。

1,不動産を引き継ぐ人を決める

遺産分割においては遺言がまず優先されますので、遺言の内容から誰が不動産を引き継ぐのか決めます。

遺言が無い場合は、相続人による話し合いで決めます。

誰が不動産を引き継ぐのか決まったら、遺産分割協議書にその内容を記載し、相続人全員の署名捺印をします。

2,役所で書類を集める

相続登記に必要な書類は、亡くなった方の戸籍、住民票、印鑑証明、固定資産税評価証明などです。

相続登記の申請書については、法務局のホームページでひな型が公開されていますので、記載例を参考にしながら必要事項を記入しましょう。

3,相続登記の申請書を法務局へ提出する

相続登記の申請の際には、登録免許税という税金を支払う必要があります。

相続登記の登録免許税の税率は、固定資産評価額の0.4%と決められています。

役所で取得した「固定資産評価証明書」に記載されている「評価額」の0.4%が税額になります。

登録免許税を計算して、申請書の「登録免許税」という欄に記載して添付書類と一緒に提出してください。

※「固定資産税課税標準額」と書かれている数字ではありませんのでご注意ください。

相続登記義務化のまとめ

これまでは任意だった相続登記が義務化されることについてご紹介しました。

令和6年4月1日以降はすぐに相続登記をしたほうが良いのか、それとも期限ぎりぎりまで引き延ばしたほうが良いのかはケースバイケースですので、相続登記のタイミングが分からない場合はご相談ください。

また、相続人が一人の場合などは自分で相続登記を行うことも可能かもしれませんが、相続人が複数いる場合などは専門家にお願いしたほうが手間もかかりませんし、確実かと思います。

不動産の相続対策として、よく挙げられる方法が「アパートの建築」です。

アパート建築に適した土地を所有している地主さんの中には、アパート建築業者から「アパートを建てれば相続対策になりますよ」という営業を受けたという方も多いのではないでしょうか。

しっかりとした事前計画を立てたうえで、アパート建築を行えば有効な相続対策になる一方、安易なアパート建築は失敗する可能性も高くなります。

起こりやすい間違いは「とりあえずアパートを建てておけば相続対策になる」という勘違いです。

アパート建築は多くの場合、金融機関から多額の借り入れをして行う場合が多いと思います。

失敗すると相続対策どころかその借り入れの返済もできないという状況もおこりえます。

場合によっては、無理にアパートを建てず何も対策しないほうがまだ良かった・・ということになってしまうかもしれません。

この記事では、なぜアパートを建てると相続対策になると言われるのか?また、その注意点についてご紹介します。

「アパート建築が相続対策になる」といわれる理由

アパートを建てた場合、土地と建物の評価額について減額されます。

評価額というのは税率が掛けられる元の金額です。

単純化すると

評価額 × 税率 = 税額 

ですので、評価額が低くなることで結果として相続税も低くおさえられることになります。

ここは特に分かりにくいところですので、図で説明しますね。

現金1億2千万を使ってアパートを建てたとします。

建物の固定資産税評価額は建築費の50~70%まで下がるので、まず8,000万円まで下がります。

そこからさらに、賃貸用の建物であればさらに評価額が下がります。

8,000万円からさらに30%減額され、結果としておよそ5,600万円まで評価額は下がります。

1億2,000万円の現金だと評価はそのまま1億2,000万円ですが、現金を使ってアパートを建てると評価はおよそ5,600万円まで下がるのです。

さらにアパートを建てた土地も評価が下がります。

1億2千万円で買った土地の相続税評価額はおよそ9,000万円になるとします。(※土地の自用地評価額の計算方法は土地が路線価地域か、倍率地域かによって異なりますので目安です。)

賃貸用の建物を建てた場合はさらに評価額が下がります。

9,000万円からさらに減額され、結果として7,380万円まで評価額は下がります。

アパート建築計画の失敗を避ける方法

ここまでの説明だけだと、「現金のまま相続するより、アパート建てて相続したほうが良いじゃないか」となりそうなのですが、アパート建築には注意点もありますので一つずつ確認します。

借入の返済計画

アパート建築は建てて終わりではなく、その後も長期間にわたって行う投資事業だということです。

融資を受けてアパートを建てる方も多いですが、投資資金がどのくらいの期間で回収できるのか確認することは重要です。

また、事業計画の家賃設定が甘めになっていないかの確認も重要です。

家賃設定を高くすれば一見すると収入が多くなりますので、上手くいく事業計画に見えてしまうこともあります。

ただ、家賃設定があまりに現実とかけ離れて高かったり、空室リスクを甘めに設定している事業計画は注意が必要です。

管理契約の内容

最近のアパート建築会社からの提案は「一括借り上げ」を前提とした内容が多いように思われます。

「管理会社が一括で借り上げてくれるなら家賃がちゃんと支払われて安心」と勘違いしてしまうとトラブルの元です。

一括借り上げ契約では、途中で家賃などの改定を協議することが条件とされていることが多いです。

つまり、最初に決められた家賃がずっと続くわけではなく、下がる可能性もあるということを考慮しておく必要があります

管理会社との家賃改定の協議がまとまらない場合は一括借り上げの契約解除ということもありえますので、オーナー自ら新たな管理会社を探さないといけない場合もあります。

アパート建築のまとめ

アパート建築は相続対策として有効な手段の一つではありますが、すべての人に合った対策ではありません。

場合よっては、他の相続対策のほうが有効な場合もあります。

本当にアパート建築が唯一の手段なのか?他の方法もないか検討する必要はあります。

またアパートを建てるのが初めてで、その事業計画を自ら分析するのは正直とても困難だと思います。

一度建ててしまったら、数十年間にわたり事業経営していく覚悟も必要です。

少しでも、分からないこと、疑問に思うことがあれば第三者の専門家に相談することをおすすめします。

遺言のイメージ

遺言を家の金庫や、引き出しの中にしまってあるという人も結構いるのではないでしょうか。

でも、自宅保管だと遺言を書いたことを忘れてしまったり、相続人が勝手に内容を書き換えてしまったりと問題が起こる可能性もあります。

せっかく子供や孫のために書いた遺言書の内容が正確に伝わらないのは悲しいことですよね。

そこで、こういった問題を解決するために令和2年7月10日より、「法務局における遺言書等に関する法律」が施行されました。

簡単にいうと法務局へ遺言書を保管するための法律ですね。

法務局って不動産に関わる仕事をしている人には馴染みの場所ですが、一般の人はあまり馴染みがないですよね。

私も不動産の仕事をしているときは週に何回も通いました。

法務局は名古屋市内だけでも3か所あります。

この記事では、この法律の施行によって今までと何が変わったのか?

何に気をつけたら良いのか書いていきたいと思います。

遺言書を自宅で保管する場合の問題点

自宅で遺言を保管してしまうと・・

遺言書を法務局で保管するメリット

遺言書を法務局へ保管する際の手続き

申請書を作成する

申請書に必要事項を記入します。

申請書は法務局のHPからダウンロードできます。

申請書はこちら

法務局に足を運んで窓口でもらうこともできます。

STEP
1

保管申請の予約をする

法務局手続案内予約サービスの専用HPで予約するか、電話で予約をします。

予約ページはこちら

STEP
2

保管の申請をする

必要なものは以下の通りです。

1、遺言書

2、申請書

3、住民票の写し等(本籍の記載があるもの。作成後3か月以内)

4、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)

5、手数料(1通につき3,900円です。収入印紙を手数料納付用紙に貼ってください。収入印紙は法務局でも買えます。)

STEP
3

保管証を受け取る

手続き終了後、氏名、生年月日、遺言書保管所の名前および保管番号が記載された保管証が渡されます。

保管番号は大切なものです。

保管番号は遺言書の閲覧、撤回、変更の届出や相続人が遺言書情報証明書の交付請求をするときに使いますので、大切に保管します。

STEP
4

遺言を書いておくことの重要性

遺言を書いておくことは、空き家問題のトラブルを避けることにもおおいに役立ちます。

遺言を書いておかないと・・

といったことが起こる可能性もあります。

空き家は以下のようなトラブルを招く原因にもなります。

遺言を書いておくことは、家族間の争いを避けるためにも有効ですし、社会的な問題を解決する意義もあります。

遺言を法務局へ保管する手続きは比較的、容易にできますので一度検討してみてはいかがでしょうか。

民法の改正によって2020年4月1日から、配偶者の居住権が認められるようになります。

「配偶者が自宅に住む権利があるのは当たり前でしょう。」といわれてしまうかもしれませんが、一旦相続が起こると、当然の権利ではなくなってしまう場合もこれまではありました。

どのような場合かというと、遺産分割で他の相続人と財産を分ける時に、財産が自宅のみ、または現金などの分けやすい財産が少ない場合です。

自宅を売ってお金に換えないとスムーズに遺産分割ができない場合ですね。

そうなると配偶者は自宅に住み続けることはできなくなります。

配偶者が自宅をもらえたとしても、その他の相続人が現金などをほとんどを相続する形だと、現金が少ししか手に入らない、また、自宅のみで現金などはまったく無しという場合もあり、残された配偶者の生活が苦しくなることもあります。

このような配偶者の抱える問題を背景に、配偶者の生活を安定させる目的で配偶者居住権が創設されました。

配偶者居住権が導入されるとどうやって分割できる?

下記は残された妻と1人っ子の子供が、相続人になる場合です。

1、現状の制度

配偶者相続の現行制度

法務省HPより

現行制度において、配偶者は自宅と預貯金500万円のみ相続することになります。

妻に預貯金があまりない場合、500万円だけだと自宅がもらえても生活が心配ということもありえるでしょう。

2、配偶者居住権が導入された場合

配偶者居住権の新制度

法務省HPより

新しい制度においては、自宅に住み続ける権利(居住権)と預貯金1500万円を手に入れることができますので、その後の生活も安心ですね。

このケースだと親子2人が相続人なので、配偶者居住権を使うまでもなく実際に揉めることはそんなに多くないと思います。(こればかりは子供の経済状況、性格にもよりますが・・)

多くの場合では、「とりあえず母さんが暮らしやすいように相続してよ」となる場合が多いので、子供が親に対して自分の相続分をことさらに要求するケースは少ないと思います。

もめそうなのは血のつながらない相続人同士です。

このようなケースだとどのような事態が考えられるのか見ていきます。

妻を亡くした父親の子供と、その父親の後妻

父親(62歳)は妻を7年前に亡くしたが、再婚した。

前妻との子供は2人いるが、後妻とは折り合いが良くなく、父が亡くなったあと後妻が財産を相続するのも快く思っていない。

実際に、父親が亡くなった後に後妻が居住権を主張するとどうなるでしょうか?

後妻は居住権があるので自宅に住み続けることができます。

一方子供2人は、自宅の所有権は相続できたとしても、自宅を売ることもできません。

同居という選択肢は・・もちろんないでしょう。

さらに、子供が相続したのは「負担付の所有権」です。

自宅に住むことはできないのに、固定資産税の負担は負わなければならない可能性が高いです。

夫を亡くした妻(子供なし)と夫の兄弟

子供のいない夫婦の場合でも、夫が亡くなったら当然に妻がすべての財産を相続できると思っている方は意外に多いです。

結論から言うと遺言なしには妻がすべて相続することはできません。

夫の兄弟姉妹にも4分の1の法定相続分があります。

民法改正前は、「夫の兄弟姉妹によって自宅を追い出される妻」ということもありえましたが、民法改正後は少なくとも、そのようなことはなくなります。

しかし、自宅が先祖代々の家だった場合、兄弟姉妹の立場からしてみれば、まったく血縁の無い兄弟姉妹の配偶者が自宅へ住み続け、しかも固定資産税は自分たちが支払わなければならないとなったら拒否反応を示すこともあるでしょう。

このように、配偶者居住権を主張することで亡夫の兄弟姉妹との関係が悪くなることは想像がつきます。

まとめ

配偶者が居住権を主張すれば、他の相続人には何らかの不利益がありますので、あまり快く思われないこともあるでしょう。

妻の立場からいえば、できることなら、夫の生前に遺言を書いておいてもらいたいところです。

夫が遺言を書いておけば妻に自宅を残したいという意思を示すことができ、もめるリスクも減るのではないでしょうか。

ここまで見てきた通り、配偶者居住権は「最後の切り札」です。

できることなら、配偶者居住権を主張して他の相続人と対立するようなことにならないように、相続が起こる前に事前の対策を検討しておきたいところです。

家族のイメージ

「うちは財産といっても自宅だけだから相続争いなんて関係ないよ」といわれる方はよくみえます。

実は「財産が自宅のみ」だからこそちょっとしたことで相続争いになる火種が潜んでいます。

相続が発生する前に行える対策もありますので、早くに問題に気づくことが重要です。

問題に気づかないまま、相続をむかえてしまうと行える対策は限られてきます。

以下が財産が自宅のみの場合、問題となってくる代表的なケースを今回は取り上げます。

1つの家を物理的に分けることは当然できません。

そうなると登記の持ち分で分けようかという話になる場合もありますが、それはそれで後々問題が出てきます。(後でくわしく書きます。)

それでは遺産分割の方法と事前の対応策をご紹介していきます。

兄弟、姉妹のいずれかが親名義の自宅に同居している間に、親が亡くなり相続が起こった場合

このような家族のイメージです。

親:父親は10年前に亡くなり、母親が最近亡くなった。

子供:姉60才(母親、夫、子供と同居していた)、弟58才

相続財産:自宅のみ(評価価値、4千万円)

同居の母親が亡くなり、自宅が相続財産となった場合、同居していた姉はどうすれば良いのでしょうか。

相続人は姉と弟だけです。

このような事態になるかもしれません。

これからどのような対応をしたら良いのか見ていきます。

親が亡くなってから不動産を遺産分割する方法

換価分割

弟が提案しているのはこの方法ですね。

分かりやすく言うと、実家を売ってお金に代えて2人で分けましょう。ということです。

この方法だと姉が不安を感じているように、同居していた実家を出ていかなくてはいけません。

現物分割

じゃあ、広い土地なら2つに分割して分ければいいじゃないか。と思う方もいるでしょう。

これが「現物分割」ですね。

ただ、あまり広くない土地で建物が立っている場合は、土地は2つに分筆できても建物は分割できませんし、2つの土地を分割後、有効活用しやすいようにきれな形に分筆できないと土地の価値が下がってしまうかもしれません。

分割後に土地を売ったり、有効活用するのに支障が出ないような分割が可能なのか検討が必要です。

代償分割

姉が実家を相続する代わりに、弟に2,000万円の金銭を渡して分割する方法です。

この方法を使うためには、姉に2,000万円の余裕資金が必要です。

親から現金も相続できているなら良いですが、今回は実家だけです。

なかなかこれだけの資金を準備するのも簡単ではないでしょう。

共有

姉と弟2人の名義で不動産の登記をする方法、文字通り共有という方法もありますが、後々問題が出てくる可能性もあります。

本人達が亡くなって新たな相続が発生すると、子供やその孫と相続人がどんどん増えていきます。

共有の不動産は共有者全員の意見がまとまらないと売ったり、貸したりできませんから、子供同士で意見の違いがあると活用ができなくなります。

このように後々の家族にもめごとの種を残すことにもつながりますので、できれば避けたい方法です。

親の生前に行える対策

今回のケースで実家に住み続けながら、相続を解決するためには代償分割を選択したい所ですが、前述のように姉に余裕資金がないといけません。

その資金を用意するために親が生前に生命保険に入り、その保険金を代償金として利用するという方法もあります。

この時に注意しないといけないのは保険の受取人を姉にするということです。

生命保険金は遺産ではなく受取人固有の財産となるため、今回のケースでは姉を受取人とします。

姉は弟に保険金から代償金を支払うことができます。

もし、弟を受取人にしてしまうと保険金は弟の固有財産となり、これとは別に自分の相続分を要求できることになります。

弟から「もらった保険金は私の財産で、相続分は相続分だからきっちり分けよう。」といわれてしまうかもしれません。

弟が聞き分けの良い人で、「保険金をもらったから、実家は姉さんが継いでよ」と言ってくれれば良いのですが・・

まとめ

相続財産が自宅のみの場合は、生前の対策や話し合いが必要なことがお分かりいただけたと思います。

また、不動産は現金や株式と違って同じ物が2つとないので、その価格の算定が難しい財産と言えます。

今回のケースで、代償分割をするのであれば、姉にとっては自宅の価値が低く見積もられたほうが弟に渡す代償金が少なくすみます。

弟からすれば自宅の価値が高く見積もられたほうが、代償金をより多くもらえます。

ちょっとした意見の食い違いで相続が争族に・・ということは避けたいですよね。

不動産の価格を算定するときにはお互いに納得できる価格を、専門家の意見も交えて決める必要があります。

小規模宅地の特例とは?

小規模宅地の特例は上手く活用できれば「自宅を相続するときの相続税が心配・・」という自宅などを相続する際に負担する相続税の悩みを減らしてくれる制度です。

制度の内容は・・

自宅やお店、会社など、住宅や事業のために使われていた宅地を「一定の要件を満たす方」が取得する場合は、一定面積までの 評価額を80%または50%減額 することが出来ます

自宅を相続した場合の減額割合が80と一番大きいので、

今回は自宅を相続した場合をご説明します。

例えば、一定の面積内で 5,000万の評価の自宅の宅地であれば、80%減の1,000万の評価にできます。

つまり、「5,000万円の自宅だけど1,000万円の自宅を相続したことしてあげるよ」ということです。

資産の中で自宅の割合が一番大きいという方は多いですから上手く活用できればとても助かる制度です。

相続人の条件である「一定の条件を満たす方」とは以下の3パターンです。

1、被相続人の配偶者

2、相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人

3、被相続人の配偶者又は相続開始の直前にお いて被相続人と同居していた一定の親族がい ない場合において、被相続人の親族で、相続開 始前 3 年以内に日本国内にある自己又は自己 の配偶者の所有に係る家屋に居住したことが なく、かつ、相続開始の時から相続税の申告期 限までその宅地等を所有している人。

ちょっと分かりにくいですね。つまり・・

  1. 被相続人(相続財産を遺して亡くなった方)の夫や妻は自宅に住んでいなくても、すぐに売却しても適用されます。
  2. 同居していた親族は、相続してからも10ヶ月その自宅に住んでいれば特例を使うことが出来ます。気を付けたいのが、あくまで実態として自宅に住んでいなければいけません。住民票を移しただけなど書類上の手続きだけでは認められません。
  3. 1、2番目の条件に当てはまる方がいない場合、同居していない子供が3年以上、賃貸のアパートや社宅・寮などに住んでいる場合は特例を使うことが出来ます。

この条件は通称「3年家なき子特例」といわれることもあります。

※3年以内に自分や配偶者が所有している持家に住んでいる方は特例を使えません。

※さらに、相続してから10ヶ月はその自宅を所有していなければいけません。10ヶ月以内に売却してしまった場合は特例を使えなくなってしまいます。

改正前の、小規模宅地の特例は上記の通りですが、

「3年家なき子特例」を色々工夫? して無理やり使えるようにした方も、以下の条件にあてはまる場合は特例を使えないことになりました。

平成30年 小規模宅地の特例の改正

以下の条件にあてはまる者を除外する とされました。

平成30年税制改正大綱
持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者を除外する。
イ 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

このような改正が行われた理由の一つとしてこんな背景があったと思われます。

なんとか「家なき子」になろうとこんな人も現れました。

「家なき子特例」にあてはまるかどうかは、自分か配偶者が自宅を所有しているかどうかで判断されるんだ。家建てちゃったから今のままじゃ、使えないなあ・・

Aさん

そうだ!・・じゃあ親族に一度自宅を買い取ってもらって、最低3年間は家賃を払って住まわせてもらおう。そうすれば「家なき子」になれるぞ。

Bさん

そうだ!・・持家を所有している自分と妻はだめだから、お母さんに相談して子供(孫)が実家をもらえるように遺言書に書いてもらおう。

このような

・持家を形だけ親族や親族の関係する法人に買ってもらい、最低3年間は家賃を支払いながら住み続ける

・被相続人から相続人の子供(被相続人からみれば孫)に実家を遺贈する

などの過度な節税スキームは認められなくなりました。

平成30年度改正 小規模宅地の特例のまとめ

他にも様々な抜け道を工夫?してなんとか「家なき子」になろうとした人もいましたが、

今回の改正で、無理やり「家なき子」になって過度な節税をするための抜け道はふさがれたといえます。

今回の改正をふまえ、自宅に「小規模宅地の特例」を適用できる方は、

配偶者や同居の親族を除けば、持ち家を持ったことがなく、3年以上別居して賃貸暮らしをしていた親族 ということになります。

相続対策を早く行うほど有利な理由

理由1.
icon_16x_48早く相続対策を行うほど、対策の選択肢は増え、効果も増します。

直前(相続開始3年以内)だと対策の選択肢は限られてきます。

相続対策には生前贈与が有効な方法ですが・・

相続開始3年以内に相続等により財産を取得する人に行った贈与財産は、相続財産とみなされますので、生前贈与の効果が薄れてしまいます。

理由2.
icon_16x_48相続税の申告と納付は10カ月という短期間の間に行う必要がありますので事前の準備がないと大変です。

10カ月の間に行わなけばならないことは、おおよその時系列で以下の内容です。

・通夜
・7日以内に市区町村長へ死亡届の提出
・葬儀
・初七日法要
・遺言書の有無の確認
(公正証書遺言以外の遺言書は家庭裁判所で検認を受け、開封します。)
・香典返し
・相続人の確認
・生命保険の請求
・年金関係の手続き
・四十九日法要
・遺産、債務の把握
・相続の放棄・限定承認
(家庭裁判所へ申述します。)

 ここまで3カ月以内

・所得税の申告と納付
(被相続人の死亡した日までの所得を税務署へ申告します。)

 ここまで4カ月以内

・遺産や債務の調査
・遺産の評価・鑑定
・遺産分割協議書の作成
(相続人全員の実印と印鑑証明が必要となります。)
・相続税の申告書の作成
(納税資金の準備をします。場合によっては不動産売却、延納、物納の検討)
・相続税の申告と納付

ここまで10カ月以内


これだけ行うことが多い中で、納税資金の準備や遺産分割協議は事前の準備
無しにはスムーズには進みません。

日頃からご家族で話し合い、遺産分割に向けた
準備をしておくことが大切です。

「夫が亡くなったら、妻が家から追い出されてしまった。」
ありえないようなことが現実にはあります。

子供がいない夫婦のケースで、夫は生前から妻にできるだけの遺産を残したいと思われていたとします。

例えば、夫が亡くなったとすると・・夫の両親も相続人になります。

夫の両親が亡くなっているとすると、夫の兄弟姉妹も相続人として浮上します。

夫の兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子供、つまり甥や姪が相続人となります。

夫の兄弟姉妹、甥・姪には遺留分(請求すれば最低限の相続財産をもらえる権利)がありません。

妻がすべての遺産を受け取れるように夫が生前に適切な形式で遺書を書いておけば、その望みも叶えられます。

このような遺書がないと・・

夫の兄弟姉妹、または、甥や姪と遺産を分けなくてはならない状況になってしまう可能性も出てきます。

さらに、遺産が自宅のみだった場合、妻が住んでる自宅を売って、現金をつくり他の相続人と分けなければならない事態にもなりかねません。

上記のようなケースは一例ですが、相続によって自宅からの退去を迫られる可能性がある配偶者が、遺産分割の協議中も無償で自宅に住み続けられるようにするほか、所有者が変わっても安価で住める「長期居住権」
の新設を目指す案がまとめられました。

また、配偶者が受け取れる遺産(法定相続分)を婚姻期間に応じて引き上げる案も検討されます。

全国で空き家が問題となる中、税制改正により4月から、相続した空き家を売却した際譲渡所得(売却益)にかかる税金を減らすことができるようになりました。

最大で600万円の節税になる方もみえますので、空き家を相続した方はぜひ知っておきたい税制です。

「売れた金額」ではなく「売却益」に税金がかかるところがポイントです。

譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=譲渡所得金額(売却益)

上記の算式で譲渡所得(売却益)は決まります。

今回の改正では、条件を満たすと「3千万円の特別控除」が認められることになりました。

「売れた金額」から「3千万円の特別控除」をマイナスすることで、「売却益」を少なくできますので、結果、節税になります。

以下が適用の条件です。

・1981年5月31日以前に建築された一戸建て(マンションなどは適用対象外)

・相続する前、亡くなった人が1人で住んでいた自宅

・相続の時から譲渡の時まで、住んだり、貸したり、事業に使われていないこと

・新耐震基準に適合するように改修して売却するか、家屋を取り壊して土地だけ売却する場合

・譲渡期間は、2016年4月1日から2019年12月31日まで

・相続開始の3年後の年末までに売却する

補足ですが、多額の相続税を納付した方は「取得費加算の特例」を選ぶほうが税金が少ないこともあります。

「取得費加算の特例」は「3千万円の特別控除」と併用できませんので、ケースバイケースで選択となります。