がん保険、医療保険を選ぶときのポイント。
がん保険の「支払限度日数無制限で保障します」という文言をよく見かけます。
ぱっと見ると、「がんで長期入院になったら怖いから、何日でも保障してくれるならありがたいなあ」と思うかもしれません。
でも、これはちゃんと保険会社が損をしない仕組みになっているのです。
データを見れば、がんで長期入院になる可能性は思ったより低いことが分かります。
がんになると何日ぐらい入院するのか
がん(悪性)になった人の平均入院日数(単位:日)
がんの種類 | 総数 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | 75歳以上 |
胃のがん | 19.3 | 5.5 | 12.1 | 13.9 | 21.0 | 25.7 |
結腸および直腸のがん | 18.0 | 8.0 | 10.8 | 13.5 | 20.0 | 24.5 |
肝および肝内胆管のがん | 18.8. | 47.8 | 12.1 | 15.8 | 19.3 | 21.6 |
気管、気管支および肺のがん | 20.9 | 10.1 | 9.8 | 16.7 | 22.3 | 26.9 |
乳房のがん | 12.5 | ― | 6.8 | 8.9 | 15.9 | 19.8 |
厚生労働省平成26年度患者調査の概況より筆者作成
思ったより短くないですか?
がんになると何ヶ月も入院しないといけないようなイメージですが平均はこれぐらいです。
長期をの入院をする人も一定数いると思いますが、多くの人は長くても1ヶ月半ぐらいの入院日数で済むといえるのではないでしょうか。
保険会社が「支払限度日数無制限」の保障をしてくれる理由はここにあります。
そもそも「がんで長期入院をする人は少ない」から支払限度日数無制限にできるということです。
次に、がん以外の病気になったときは平均で何日ぐらい入院することになるのか、比較してみます。
がん以外の病気にかかったら何日ぐらい入院するのか
がん以外の病気になった人の平均入院日数(単位:日)
病気の種類 | 総数 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | 75歳以上 |
糖尿病 | 35.5 | 13.0 | 14.1 | 20.0 | 47.4 | 65.2 |
高脂血症 | 29.4 | 1.0 | 4.5 | 7.4 | 62.3 | 83.8 |
精神および行動の障害※ | 291.9 | 36.2 | 60.1 | 204.4 | 523.0 | 473.0 |
アルツハイマー病 | 266.3 | _ | _ | 217.8 | 267.4 | 257.6 |
高血圧性疾患 | 60.5 | 8.9 | 11.0 | 13.8 | 68.4 | 83.3 |
心疾患(高血圧性を除く) | 20.3 | 30.5 | 10.2 | 9.0 | 23.7 | 30.5 |
脳血管疾患 | 89.5 | 20.7 | 44.6 | 46.9 | 100.7 | 116.0 |
肺炎 | 29.7 | 6.1 | 9.2 | 16.2 | 36.2 | 38.4 |
厚生労働省平成26年度患者調査の概況より筆者作成
※血管性および詳細不明の認知症、統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害、気分障害(躁うつ病を含む)
「精神および行動の障害」や「アルツハイマー病などの神経系の疾患」が特に長く、次に「高血圧、心臓、脳血管などの循環器系の疾患」が長くなっています。
がんの入院より長い入院になる病気も多いですね。
がん以外の病気に備える医療保険こそ、支払限度日数無制限の保障がついていればいいなとも思いますが、残念ながら少ないです。
三大疾病、七大疾病については支払限度日数制限の商品もありますが、「精神および行動の障害」や「アルツハイマー病などの神経系の疾患」の長期入院を保障してくれる医療保険はほとんどないということは知っておくべきでしょう。
医療保険の入院日数は30日、60日、90日、120日など保険会社、商品によって違いがあります。
当然、保障される入院日数が多くなるほど、保険料も上がります。
まとめ1:がん保険の決め手
データを見れば、がんで長期入院する人は少ないので「支払限度日数無制限」が、がん保険のメリットとは言えないと思います。
がんになった人の多くは、60日以内の入院で済み、あとは通院で治療というイメージです。
短い入院で済んだけど、長期間通院しなければならないこともあるでしょう。
「支払限度日数無制限」より、メリットがありそうなのは「診断給付金」です。
「がんと診断されたら100万円」など、入院日数や治療内容にかかわらず、まとまったお金がもらえる仕組みです。(通院の治療だけだと診断給付金はもらえない保険もあるので注意。)
入院が長くなっても、通院が長くなってもどちらにも使えます。
「診断給付金」のもらいやすさが、がん保険を選ぶ際の決め手だと思います。
保険会社、商品によって受け取り回数は1回のみの保険もあれば、2回の保険もあります。
また、上皮内新生物(初期のがん)の保障についても異なりますので、これらの条件をじっくり比較したいです。
まとめ2:医療保険の考え方
データから、「がん」より「がん以外の病気」のほう入院日数が長くなる可能性が高いことが分かります。
60日の入院保障だと足りなく場合もあります。
120日の入院保障にしても「精神および行動の障害」で入院したら足りなくなる可能性があります。
730日まで入院保障してくれる医療保険もありますが、当然保険料は上がります。
また、「7大疾病による入院は日数無制限」などの特約を付けられる医療保険もありますが、保険料は上がりますので保険料との兼ね合いで選択したいです。
保険の本当の役割が「めったに起こらないが起こった時には経済的打撃が大きい事に備える」ということであるならば、60日までしか保障しない医療保険にどれだけの意味があるのか疑問は残ります。
最近まで、入院が60日を超えた場合から保障する商品もあったのですが販売中止になりました。
きっと売れなかったのでしょうね・・
個人的にはこういう商品が医療保険の本来の役割を果たせるのだと思いますが、「売れる医療保険」と「経済合理性の高い医療保険」は同じではないのですね。
医療保険が本当に困ったときに助けてくれるのか理解したうえで、必要なのかを考え加入を検討したいです。
入院1日から保障してくれる医療保険は本当に必要ですか?
投稿者プロフィール

- 住宅不動産コンサルタント/1級ファイナンシャルプランニング技能士/宅地建物取引士
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株式会社ライフオブライフ代表。
住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う
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