夫婦で住宅ローンを組む時の団体信用生命保険の落とし穴

住宅ローンをこれから組む予定の方は、団体信用生命保険の存在はすでにご存じかと思います。
念のために、団体信用生命保険(団信)とは・・
住宅ローンを組んだ方が返済中に、亡くなったり、所定の高度障害になられたときに、残りの住宅ローンの残債を返済してくれる制度です。
この制度は良く知られているために、「夫婦で住宅ローンを組んでも団信があるから安心だ」と多くの方が感じていると思います。
しかし、団体信用生命保険がすべての住宅ローンの残債を返済してくれないケースがあることはご存知でしょうか?
これからそのようなケースをご紹介していきます。
団体信用生命保険で残債すべてを返済できる場合
まず、団信ですべての住宅ローンの残債を返済してもらえるケースを見てみましょう。
夫か妻が全額の住宅ローンを1人で組む場合
例えば、妻が専業主婦の場合は夫の収入だけで住宅ローンを組むことになります。
夫が亡くなった場合は、住宅ローンの残債はすべて団信で返済してもらえ、残された妻が住宅ローンを返済していく義務はなくなります。
これなら残された妻も安心できます。これは分かりやすいケースですね。
団体信用生命保険で残債すべてを返済できない場合
ここからが本題ですが、団信ですべての住宅ローンの残債を返済してもらえないケースです。
3つの住宅ローンのパターンがあります。
1、収入合算して連帯保証で住宅ローンを組む
2、収入合算して連帯債務で住宅ローンを組む
3、夫婦でペアローンを組む
※それぞれの住宅ローンの詳しい説明はこちらの記事もご参照ください。
収入合算して連帯保証で住宅ローンを組む
連帯保証人は債務者が返済不能になった場合のみ、返済の義務を負います。
例えば、夫の収入に妻の収入を合算する場合、夫が債務者となり、妻は連帯保証人となります。
この場合、団信に加入できるのは夫だけです。
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夫が亡くなった場合はどうなるのでしょうか?
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その後の妻の返済は全額免除されます。
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妻が亡くなった場合はどうなるでしょうか?
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妻が亡くなっても夫の返済は免除されません。
(夫が連帯保証人になる場合、夫と妻の立場は逆になります。)
妻はあくまでも連帯保証人なので、団信には加入できないからです。
この場合は危険度が増します。
妻が亡くなって妻の収入がなくなっても、夫はその後も1人の収入だけで、住宅ローンを返済し続けることになります。
収入合算して連帯債務で住宅ローンを組む
例えば、夫が主債務者、妻が連帯債務者となり、3,000万円の住宅ローンを組んだとします。
この場合、夫も妻も3,000万円の債務を負います。
どういうことかというと・・
- 夫が1人で3,000万返済するも良し。
- 妻が1人で3,000万返済するも良し。
- 夫と妻が力を合わせて3,000万返済するも良し。
3パターンのどれでもOKということです。
貸したほうの銀行から見れば、夫と妻のどちらにでも3,000万円の返済を請求できるということになります。
注意するべきことは、民間金融機関で連帯債務の住宅ローンを組んだ場合、主債務者しか団信に加入できないことが多いことです。
夫しか団信に加入できない住宅ローンの場合・・
数年後に夫が亡くなった場合、夫の住宅ローン残債は団信で返済されるので妻が返済する必要はありません。
妻が亡くなった場合は、夫は1人の収入で住宅ローンを返済しなければなりません。
一部例外として、フラット35など一部の住宅ローンは連帯債務の住宅ローンを組んだ場合でも、夫婦で団体信用生命保険に加入できます。
下記に参考として、連帯債務において夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合に全額返済される団信に加入できる住宅ローンの事例をご紹介します。
・フラット35 デュエット
連帯債務者であるご夫婦2人で加入することができる制度です。ご夫婦のどちらか一方の加入者が死亡または所定の高度障害状態になられた場合には、住宅の持分や返済額等にかかわらず、残りの住宅ローンが全額弁済され、ローンの返済義務は残りません。また、「デュエット」を利用できるご夫婦とは、戸籍上の夫婦、婚約関係、内縁関係にある方々です。
フラット35HPより
・三井住友銀行 クロスサポート(連生団体信用生命保険付住宅ローン)
夫婦でペアローンを組む
ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを借ります。
夫婦が自分の住宅ローンに対してそれぞれ債務を負い、お互いに住宅ローンの連帯保証人になります。
例えば、3,000万円の住宅ローンを組む場合、夫が2,000万円を組み、妻が1,000万円組むというようなパターンが考えられます。
この場合、団信は夫婦それぞれで加入します。
数年後、夫が亡くなったとしたら、夫の分の住宅ローンは団信で返済されますが、妻が組んだ住宅ローンはそのまま返済していかなくてはいけません。
まとめ:夫婦で住宅ローンを組む場合の団体信用生命保険の考え方
夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合の危険度は夫と妻の収入の差によっても変わってきます。
特に夫婦の内、収入が多い方に万が一のことがあった場合に備えて、より手厚い保障を準備しておくことが必要です。
夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合、団信で返済できるのはどれだけなのか、事前に十分な確認とライフプランニングでのシュミレーションが必要です。
団信だけで返済しきれない場合は、生命保険で補うことも必要となります。
投稿者プロフィール

- 住宅不動産コンサルタント/1級ファイナンシャルプランニング技能士/宅地建物取引士
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株式会社ライフオブライフ代表。
住宅相談を専門とする住宅不動産業界歴26年のファイナンシャルプランナー。買う方の立場に立った「住宅コンサルティング」「将来家計のサポート」を行う
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